プールコストの最小値変更によるステーキング報酬の「年率」への影響調査

目次

プールコストの最小値が340ADAから170ADAに変更

2023年10月28日、カルダノネットワークではステークプールの最小プールコストが340ADAから170ADAに引き下げられました。

この変更の背景には、いろいろなプールへのADAの分散化に繋げる期待があり、
ステーキング委任をしている委任者のADAの報酬の年率を上げるためのものとなります。

大規模なプールと小規模プールでの委任者の報酬の収益性に生じていた格差を縮小することも意図されています。

ステーキング報酬への影響とカルダノの戦略

2023年11月現在は、プールが1ブロック生成をすると470ADA」のブロック生成報酬が発生します。
大規模なプールは多くのブロックを生成する一方で、小規模プールは1エポック(5日)に1ブロックのみの生成ということもあり、収益性に格差が出てしまっている状態でした。

プールコストを「170ADA」に変更することで委任者の報酬年率がどのように影響するかについて分析していきます。

プールのステーキング報酬は、「ブロック生成数」と「ブロック生成報酬」、「プールコスト」と「プールマージン」から割り出せます。

oknw

プールのステーキング報酬 = (ブロック生成数 × 470ADA) – プールコスト – プールマージン

例えば、プールコスト340ADAでプールマージン0%のプールの場合、
1エポック(5日)に1ブロックのブロック生成の場合、プールの報酬はこのようになります。

(1 × 470ADA) – 340ADA = 130ADA

プールコスト「340ADA」のプールで1ブロック生成した場合のプールのステーキング報酬

この計算ではプールの報酬は「130ADA」となっており、プールの運営コストが収益を圧迫しています。
結果として小規模プールの委任者にとっての年率は不利なものになっていました。

しかし、プールコストを「170ADA」に変更することで、報酬は次のように改善されます。

(1 × 470ADA) – 170ADA = 300ADA

プールコスト「170ADA」のプールで1ブロック生成した場合のプールのステーキング報酬

この計算ではプールの報酬は「300ADA」となっており、プールコストを「170ADA」に変更することで、ステーキング委任者への分配報酬が増加し、結果的に年率も向上することが期待されます。

この変更点は、小規模プール運営者の報酬を減らす代わりに、委任者の収益を増やし、
全体のステーキング環境のバランスを取るというカルダノの戦略的な判断から導入されました。

こうした変更が今後、ネットワークの健全性と委任者の満足度の両方にどのような影響を与えるのか、業界全体が注目しています。

カルダノのエポックとステーキング報酬の変化: 過去と現在の比較

カルダノは、ビットコインのような半減期を設けず、報酬が徐々に減少する仕組みを採用しています。

2023年11月に入り、カルダノは446エポックを迎えていますが、過去と現在を比較すると、報酬に大きな変化がみられます。

211エポック時にはステーキングによる1ブロックあたりの報酬は「750ADA」でした。

これは現在の「470ADA」と比べて「280ADA」もの変化があることになります。
この変化は、特に小規模プールの運営者とステーキング参加者にとって重要な意味を持ちます。

211エポック時には、小規模プールでも複数ブロックを生成することで、報酬が大きくなる傾向にありました。
たとえば、1ブロックの生成で410ADA、3ブロックならば1,910ADAの報酬を分配することが可能でした。

これは、小規模プールがステーキング委任者に高額の報酬を分配できるということを意味していました。

しかし、ステーキング報酬には変動がつきもので、エポックごとに報酬が変わることは避けられませんでした。
それにもかかわらず、全体を通じてみると、報酬の高いエポックが存在していたため、小規模プールでもステーキング委任者は安定したリターンを期待できたのです。

100万ADAプールのステーキング報酬 – 年率比較分析

カルダノステーキングのプールコストによって100万ADAプールの「年率」がどれだけの差があるのかを計算してみました。

ここでの比較は、年間の運営コスト「340ADA」と「170ADA」を採用している二つの仮想のプールです。
委任量は100万ADAで統一します。この委任量であれば1エポックごとに平均して1ブロックが生成されると仮定します。

カルダノでは1エポックが5日となり、年間では73エポック(365日÷5日)となります。
したがって、1年間のブロック生成数の期待値は73ブロックです。

1年を通してこのような割り当てになると想定します。

73回: 73ブロックの割り当て

/** — 以下は詳細 — */

30回: ブロック割り当てなし(0ブロック)

25回: 1ブロックの割り当て(25ブロック)

10回: 2ブロックの割り当て(20ブロック)

5回: 3ブロックの割り当て(15ブロック)

2回: 4ブロックの割り当て(8ブロック)

1回: 5ブロックの割り当て(5ブロック)

/** — 計算 — */

回数の計算 : 30 + 25 + 10 + 5 + 2 + 1 = 73回
ブロックの計算 : 0 + 25 + 20 + 15 + 8 + 5 = 73ブロック


100万ADAの委任量のプールの1年を通してのブロック生成割り当て想定

1ブロック生成報酬は「470ADA」とします。
1年で73ブロックの生成をします。
これで年間のプール全体のステーキング報酬が割り出せます。

73ブロック × 470ADA = 34,310ADA

委任量100万ADAの年間のプール全体のステーキング報酬

プールコスト340ADAの場合

年間のプールコスト: 43エポック × 340ADA = 14,620ADA
年間ステーキング報酬: 34,310ADA – 14,620ADA = 19,690ADA
年率: (19,690ADA ÷ 100万ADA) × 100 = 1.96%

プールコストが170ADAの場合

年間のプールコスト: 43エポック × 170ADA = 7,310ADA
年間ステーキング報酬: 34,310ADA – 7,310ADA = 27,000ADA
年率: (27,000ADA ÷ 100万ADA) × 100 = 2.7%

結論

プールコストが340ADAで1.96%
プールコストが170ADAだと2.7%となりました。

この差は年間で7,310ADAに相当します。

個人的には思った以上に差が出る結果となりました。

この分析は、小規模プール選びにおけるコスト効率の重要性を示しており、委任者のステーキング報酬のリターンに大きな影響を与えることを示しています。

プールの委任量によるステーキング年率比較

ブロック生成報酬は固定で「470ADA」で計算します。
このブロック生成報酬の数値は実際には減少していきますが、計算をしやすくするため固定の数値として使用します。

また、実際のブロック生成の割り当てはADAの委任量によってランダムに割り当たるため、提示される数値はあくまで期待値としてご理解ください

1年間を73エポックとし、委任量が100万ADAごとに73ブロックが割り当てられるとしています。
この理論上のモデルを基に、委任量が100万ADA増えるごとにブロック生成数を加算し、200万ADAで146ブロック1000万ADAでは730ブロックを生成すると仮定します。

プールマージンは0%とし、プールコストを「340ADA」と「170ADA」に設定した場合の年率順で以下の表に示します。

委任量が「200万ADA」でプールコストが「170ADA」の場合、「500万ADA」でプールコストが340ADAの場合と比較しても年率はほぼ同様であることが確認できます。

同様に、委任量が「300万ADA」でプールコストが「170ADA」の場合と、委任量が「700万ADA」でプールコストが「340ADA」の場合の年率もほとんと同じであることが見受けられます。

実際には年間にどれくらいのブロック生成されるかによって、年率の結果に大きな影響を与えますが、この分析はあくまで期待値に基づいたものになります。この計算はあくまで参考としてご利用いただき、最終的な判断は様々な考慮した上で行ってください。

比較詳細

上の表にプラスして「ブロック生成数」と「割り当て0の回数」の情報も載っている表となります。
委任量に応じてプールの総報酬から年間のプールコストを差し引いて、年率を計算しています。

カルダノ分散化への一歩

結果として、プールコストの変更はステーキングエコシステム全体になにかしらの影響を与えると思います。

小規模プールにとっては、委任者にこれまでよりも高いリターンを返すことができるようになります

このプールコストの引き下げにより、ステーキング委任者はより多くのプールを選択肢として拡げることができます。

カルダノはこの変更を通じて、ステーキング委任者にとってよりフェアで、
利益を最大化する機会を提供することと、ADAの分散化に繋がることをを目指しています。

最後に

今回のプールコストの変更は、ADAのより広範な分散と、ステーキングの発展を促進することを狙っています。

OKNWプールは、分散化への貢献とブロック生成というカルダノステークプールの使命を果たすため、プールコストを最小値の「170ADA」に変更を行いました。

プールコストを下げることは、サーバー維持費など運営コストの観点から挑戦を意味しますが、コミュニティーへの貢献とネットワークのセキュリティ向上のため、このステップを踏み出す価値があると判断しました。

OKNWプールではプールコストを170ADAまで引き下げることで、委任者に対する報酬のリターンをできる限り上げつつ、より多くの方に委任していただきやすい環境を整え、ブロック生成数の増加を目指していきます

多様なプールへのADAの分散化は、ADAの分散化とカルダノのネットワークはより強固になり、セキュリティが向上し、最終的にはカルダノの全体価値の向上に繋がると信じています。

そのためにも、OKNWプールはこれからも運営を頑張っていきます。

ぜひ一緒にカルダノを盛り上げていきましょう!

最後まで読んでいただきありがとうございました。

カルダノステーキングプール「OKNW Cardano Pool」について

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